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行燈部屋を作ってしまう今どきのデベロッパー感覚 [マンションの間取り]

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

住宅情報誌SUUMOには、「人気3LDKランキング」という特集記事がときどき掲載されます。それによると、「2つの居室とリビングがバルコニーに面した間取り(いわゆる南面3室のワイドタイプ)」と「全居室が横並びで同じ向きの間取り(ワイドスパン横長間取り)」がベスト1と2で、「両面バルコにーのある間取り」は7位ですが、計3タイプがベスト10位の中にあります。

共通するのは、居室もリビングルームも全て窓があるということです。人気がある間取りには登場しない田の字型の一般的な間取り(図1)でも、基本的には居室に窓が付くのです。

本来、窓のない部屋をわざわざ作るという発想は、設計家にもデベロッパーにもありません。

図1 外廊下式マンションの田の字タイプの間取り
tanoji-madori.gif

しかし、結果的に窓なしの部屋があるマンションが最近は増えているのです。最近と言っても過去5年くらいの傾向と言うべきかもしれません。

なぜ作ってしまうのか。理由は明らかです。タワーマンションが増えたからです。

タワーマンションと窓なし居室は、どんな関係にあるのでしょうか? 

タワーマンションの多くは「内廊下方式」になっていて、玄関脇に居室をレイアウトしても窓を設けられないからです。法律の解説は割愛しますが、簡単に言えば気圧と火災の問題からできないことになっているのです。

このため、内廊下式のマンションでは図②のような間取りが誕生します。Bedroom(1)が窓なしの居室です。先に見た図1の住戸は「外廊下(開放廊下とも言う)方式」のマンションに出て来る間取りです。


図② 窓なし居室のある内廊下式マンションの間取りutirouka-andon.gif

これは有名なタワーマンションの1タイプです。南面3室タイプの人気間取りとも言えるのですが、惜しむらくは1室に窓がないことです。

タワーマンションでも次の図③のような全室窓付き間取りもあります。しかし、これは角住戸です。タワーマンションの内廊下タイプでは(外廊下タイプのタワーも例外的にある)、中住戸は窓なしの居室ができてしまうものと承知しておかなければならないのです。

図③ タワーマンションの全室採光・角住戸

tower-kado.jpg
内廊下式でないのに、何故か窓なし居室付きの物件も見られます。図④の洋室(2)がその部屋です。

図④ 外廊下式マンションの窓なし居室

sotorouka-andon.gif

この住戸は外廊下式のマンションで見つけたものです。なぜ、こんな間取りができてしまうのか、理由は不明ですが、玄関側にエレベーター塔か階段室か、またはL字型のマンションで一方の棟の壁が迫っているといったところでしょう。こういう場合も窓が設けにくい法規制があるのです。

脱線しますが、上図④をよく見ると、玄関脇の部屋に窓があるので外廊下式のマンションということは明らかなのですが、よく見ると、「サービスルーム(納戸)」と表示されています。

これは、壁や階段室が目の前にあるなどの理由で、法的な基準を満たすだけの光を取り込めないため、居室として認められないことを表しています。

ここで疑問を持たれた読者がいらっしゃると思いますが、窓があっても暗いからという理由で納戸と認定され、仕方なくサービスルームという表示にしたのに、一方では窓がないのに居室(洋室)と表示していいとはどういうことでしょうか?矛盾していると思いませんか?

その説明を付記します。

窓なし居室の扉に注目していただくと、いずれも引き戸になっていますね。図②の場合は、他の2居室が開き戸であるのに対し、窓なし居室は引戸です。

これが法の基準のおかしなところで、引戸なら開けた状態にしておけばバルコニー方向から自然採光が届くので、「居室」と認めるが、開き戸ではバタンと閉まってしまうからダメだというのです。だから、窓なし居室は必ず引戸、窓付き居室はどちらでも構わないということになっています。


●窓なし部屋をどう使いますか

辞書で行燈部屋の意味を調べると、「行燈部屋とは、光がほとんど入らない部屋のことです。
もともとは遊女屋などで、行燈や布団を収納していた薄暗い部屋のことをこう呼んでいたことから転じた」とあります。

ここまで「窓なし居室」と表現して来た理由がお分かりいただけたと思います。行燈部屋は何となく暗いイメージがするからです。

しかし、イメージだけでなく実際にも暗いのがマンションの行燈部屋です。つまり、引戸を閉めれば昼でも真っ暗、全開しても薄暗い部屋が多いのです。

次の図5なら、引き戸が3枚なので全開すればまだマシですが、ほかは全開しても暗い部屋と思われます。

図5 開放感のあるな窓なし居室
kaihoutekina-andon.png

窓なし個室どう使うかは、なかなか悩ましいものです。

営業マンは、「窓なしの方が落ち着きますよ。書斎とか趣味のお部屋にどうでしょう」などと言いますが、あまり納得感のない話です。

上図5のマンションをお買いになった人は、家族構成も夫婦だけで将来も家族が増える見込みはないということから、洋室(3)を最初からダイニングルームと位置付けていました。しかし、このような買い手は少数派のはずです。


●理想的なマンションはないものだが・・・

窓なし居室の間取りを作らないですむ方法はないものでしょうか?

筆者も間取り作りには一家言(いっかげん)持っている方なので、「こんな間取りをよく世に出すものだ」などと独り苦言をつぶやいているのですが、そうなってしまう業界事情も理解できないでもないだけに、心境は複雑です。

とはいえ、マンションという商品は場所という替われないベースとのセットなので、建物企画が悪くても売れてしまいます。早く言えば、どんなものでも場所さえ良ければ売れるので、「ここは良くない」と売り手が自覚できる部分があっても、そこに目をつぶって商品化してしまうのが現実です。一般消費財ではありえない話です。

買い手も、ここが良くないとか足りないとか認識していても、マンション購入に当たっては、妥協せざるを得ないという実態があります。完璧はないのだからと言い聞かせ、売り手も優先順位をつけて選びましょうと誘います。

マンション・不動産というものは数に限りがあり、最上階の東南の角の住戸といったらその立地では唯一無二なのです。大げさに言えば、世界でひとつだけの商品を選択しようとするわけです。

しかし、このマンションにはこれしかないのだからと言われても釈然としないのも事実でしょうし、売り手に文句のひとつも言いたいに違いありません。「もっとちゃんとした間取りを作れよ」と。

ともあれ、行燈部屋付きは間取りの人気度が低いのも事実です。「寝るだけだから暗くて構わない」などと割り切らないで欲しいと筆者は秘かに願っています。行燈部屋不買運動に発展すれば、マンションメーカーも作るのを止めるでしょうから。

まあ、そんなことにはならないでしょうが、最近のデベロッパーの姿勢を見ると「○○だから仕方ない」が幅をきかせてしまっている。そんな気がするのです。胸を張って「悪くないプランでしよ」と言える間取り作りに、真摯に向かって欲しいと心から願うところです。



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ソニー不動産で高く売れたの声

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売れ行きの悪さをひた隠しにする売主の意図 [マンションの値引き販売]

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売れ行きが良いと、その品は良いものと思いこむ人間心理があると言います。

行列ができるラーメン店には「きっとおいしい」と思いこみ、次々に並ぶという状態を作り出すこともよく知られています。


マンションも同じで、モデルルームが「押すな・押すな」の盛況にあれば、売り手が説得を特に意識しなくても顧客は短時間に買うという結論に達してしまいます。

平日の比較的来訪者が少ないときに見学に行った人も、壁に掲示された大きな価格表に「申込」や「登録」のシールが張られ、価格が見えている部屋が僅かしかない状況を見れば、「あっ、もうこんなに売れている」と慌てることでしょう。

抽選方式の物件なら、価格表の各住戸に3とか5とかの数字のシールが貼られているのを見せられると、「すごい人気だ」と感じざるを得ないはずです。

新築マンションの売り手は、この顧客心理を利用しようと図ります。

一方、売れ行きのぱっとしない物件には、「売れないのは何か良くない所があるに違いない。慎重に考えなければ」という買い手心理が働きます。そこで、売れ行きが良さそうに錯覚させる戦術を講じる売り手が登場します。

中には戦術というより、ウソの演出で顧客の決意を誘う業者もあるのです。実際にあった話ですが、「50戸余のマンションで、あと10戸と聞いていたが、入居してみると10戸しか売れていないではないか。騙された」と一部の買い手が騒いだ事件があったのです。


●第6期販売と第3期3次販売は似ているが・・・

ウソはいけませんから、売り手は別の手を使います。分割販売(期分け分譲とも言います)という戦術です。

100戸のマンションをいきなり全部売り出さず、「第1期50戸・新発売」、日を置いて「第2期20戸・新発売」などと小出しにして行く方法です。

*プラウド新宿中落合 第3期
*シティテラス大森西 第4期 
*オーベル横浜白幡 第5期 
*プラウド日吉 第4期2次 
*プラウド国分寺 第2期5次 
*プラウドシティ志木本町 第6期3次 
*オハナ北習志野 第4期4次

これは住宅情報誌SUUMOの2016年9月20日号から分割回数の多い物件のみピックアップした事例ですが、第3期とか4期、5期というのは、単純に3回目・4回目・5回目の売り出しであることが分かりますが、第4期2次とか第6期3次というのは一体何回目の売り出しなのか分かりません。

いずれにせよ、売り出し回数が多いのは全体戸数が多いからという事情もありますが、売れ行きが良くないので、1回当たりの売り出し戸数を少なくせざるを得ず、結果的に売り出し回数が増えてしまったのです。

1回あたりの売り出し戸数を何故少なくするのでしょうか? 50戸売り出して10戸しか売れなかったら、売れないマンションという烙印を押されてしまうからです。反対に、10戸だけ売り出して10戸売れれば「完売」とアピールできるとともに「好調」のイメージを植え付けることができるので、後者を選択するのです。

そんな小手先の戦術も、しばらくすると「本当は売れていないのだ」と買い手の知るところとなるのですが、販売初期は有効なので採用を続けているのです。

蛇足ですが、回数が多いほど売れ行きの悪さを自ら白状してしまうことになるので、第6期よりは第3期3次などとする、つまり数字が大きくならないように考えたのが、●期●次方式なのでしょう。


●売れ残りは買い手の値引き圧力にさらされる

売れ行きを隠す理由はもう一つあります。それは、買い手が値引きを要求して来る確率が高まるからです。

筆者へのご相談メールにも、買い手の気持ちが出ている例が多数あります。

未だに3割超程度の在庫を抱えており、特に最近の成約ペースはスローダウンしているらしく、これだけ見ると値引きのチャンスもありそうだと思うのですが、営業さんは「値引きは絶対ない」と断言しています。この「値引きは絶対ない」というのは本当でしょうか?
 
これなどは代表的な質問例です。

「売り出してから随分時間が経つみたいだ。沢山の売れ残りを抱えているようだから、値引き要求に応じるはずだ」――こんなふうに買い手が考え始めると厄介だなと現場の営業マンは戦々恐々とします。

彼らは、その要求をかわす術を知ってはいますが、要求が来た段階で不快に思うらしく、そんな時期を迎えずに完売してしまいたいというのが本心です。

しかし、会社の方針は完成から何か月経とうが、値引きは一切受け付けるなという。値引きなしで短期完売へ。その目標(例えば竣工時完売)に向かって、現場の販売員たちは様々な戦略・戦術、あるいはセールスの技巧を凝らして日夜奮闘しているのです。


●売れ残りが隠せない状態になったときの言い訳

建物が竣工し、引き渡しが進むと夜は灯りが付かない部屋の数などから極端なウソはバレバレになってしまいます。

竣工直前の段階で、多数の売れ残りを抱え込むことになったマンション。なぜ売れないのか、疑問に感じた買い手は「良いマンションだと思うのですが、売れ行きが良くないのは何故ですか」と営業マンに尋ねました。

営業マンの回答は、「売り出してからの時間が短かったので」とか、「低層マンションなので、工期が短く、売り出してからあっという間に竣工を迎えたもので、本格的な販売はこれからです」、「台風が週末ごとに来たので客足が伸びなかったのが原因です」、「何しろ戸数が500戸もあるので、販売期間はどうしても長期に渡るものなんですよ」等。

これらの言い訳は、半分が本当で半分はウソです。「価格が高くて、客は来るが買ってくれない」が真相であるもの、「競合物件との差別化が不十分であったために客を奪われた」というもの、「客は来るが、現地を見て落胆し帰ってしまう物件」等。


●増える売れ残り・隠れ在庫に注目

最近数年間の価格上昇は、買い手の高値警戒感を生み、大型物件に限らず在庫を増やし続けているようです。

在庫とは売り出したが売れなかった戸数のことですが、未発売の隠れ在庫も相当数抱えるようになったようです。

分割販売を数回繰り出して、100戸のうち累計70戸を発売したが、そのうち契約に至ったのは60戸。従って、在庫は10戸となります。未発売が30戸あるので、真実の在庫は40戸なのです。

未発売在庫は隠れ在庫とも言われますが、その中には「目玉」となる住戸もあるものです。

買い手心理として、売れ残りは良くない物という先入観が働くので、売り手は買い手にそう思わせないための価値ある在庫(角部屋など)を僅かながら残しているものだからです。

何処が残っているのか、隠れ在庫も併せてチェックすることをお勧めします。売れ残りマンションの中から意外な掘り出し物をゲットできるかもしれません。ついでに、値引き要求をお忘れなく。


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ダイニング横の脱衣室をどう思いますか? [マンションの間取り]

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中古マンションを見ていると、なかなか結構な間取りに遭遇します。昨日も、評価依頼のあった都区内の古い物件で「おやっ」と思う間取りを発見しました。

【図➀】
hukinuke-madori.jpg
スパン(間口)は少し狭いものの、玄関前以外は他人が通らないので、寝室のプライバシーが確保された形になっていること、お洒落空間である洗面所に生活臭が出てしまいがちな洗濯機置き場がないこと、ボイド(吹き抜け)があるらしく、そこに向けて洗面所と浴室に窓を設けていること、キッチンが2WAYになっていることなど、最近の「田の字型」間取りとは随分違う印象です。

無論、短所もあるのですが、個人的には好きなプランです。

さて、その「田の字型」間取りについて、今日は気になる点を指摘してみたいと思います。


●パークホームズ板橋蓮根69.64㎡の場合

図②は、オーソドックスな3LDKタイプですが、注目点は洗面脱衣室の出入り口の位置です。
ご覧の通り、廊下にあります。これが一般的なタイプです。

長年、多数のマンションの設計に参画し、様々な間取りを見て来た筆者には全く違和感のない位置です。

【図② 洗面所の出入りが廊下にある】
parkhomes-itabasuhasune.png
●シティテラス東陽町73.28㎡の場合

一方、図③は洗面所の出入りがダイニング部分にあるタイプです。このような間取りは最近まで殆ど見たことがありませんでした。

いつ頃からか、1年前くらいか、もう2年か、記憶が定かではないのですが、このようなタイプが急に増えた気がしてなりません。

洗濯と食事の後片付けなど、主婦動線にはこの方が良いという意見もあると聞きますが、筆者は抵抗があります。 年頃の娘さんのいる家庭を想像してみると、家族の目に留まるところに出入口があるのはいかがなものかと思うからです。

最近の家族関係は昔と変わってしまったのかもしれませんが、読者の皆さんはどう感じますか? 

廊下に出入口がある図②のタイプが圧倒的に支持されない時代になったというなら話は別ですが、そこまでの変化はないと思いますし、販売中の他の物件を見ても図②タイプはまだまだ多いのです。

ちなみに、図③は長谷工コーポレーションの設計・施工物件です。

間取りに限らず、マンションの企画や設計に関しては売主主導で進められるのが普通です。

シティテラス東陽町の売主は住友不動産であり、企画立案に関しては他社と一線を画した特異なマンションが多いので、まさか長谷工コーポレーション任せで商品化したとは思えません。

実は、この物件の他の間取りタイプも見ましたが、殆ど図③型です。

【図③ 洗面所の出入りがダイニング部分にある】
cithiteras-touyoutyou.jpg
●間取りは大事な選択ポイントです

筆者は「間取りに惚れるな」などと極端な表現を使うことがあります。しかし、その意図は、優先順位として「間取りより立地」であることなどをお伝えしたいためです。

間取りは、快適なマンションライフを送る上で大事な要素であることは論を待ちません。
「立地は無論ですが、決め手は間取りでした」と語る購入者はとても多いのです。

筆者が提供する資料集「住んで気づくダメ間取りと名作間取り50選」が依然として高い人気を維持していることからも、間取りに対する関心度の高さを窺うことができます。

ときどき住宅情報誌SUUMOが特集する「人気の3LDKランキング」を見ていても、上位に来るタイプは大きく変わっていないようです。「キッチンと洗濯置場が近くていい」という間取りは、図③のようなダイニングを挟んだものではなく、キッチンと洗濯室(洗面所)がダイレクトにつながったタイプです。

マンション選びは常に「あちら立てればこちらが立たぬ」と悩ましいものですが、将来、自宅を売却するとき、見学者に間取りが気に入ったと言ってもらえるような家の方がいいに決まっているので、細かな点も見逃さないようにしたいものです。


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「今は買うと損」の声に反論するとしたら [マンションの資産価値]

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前回の記事で、「最近のような短期間に大きな価格上昇が起こると、その恩恵を受ける人が増えます。2010年~2012年頃に購入した人は、みなさんそうかもしれません」と書きましたが、反対に急激な上昇が起きてしまった最近1~2年に買った人、または間もなく買おうとしている人は損失を被ってしまうのでしょうか?

同じような条件のマンションを値上がり前夜の2012年に5000万円で買った人の方が、値上がりの進んだ2015年に6000万円で買った人よりお買い得だったのは確かです。

これは結果論みなたいな話です。価格動向を横目で見ながらタイミングを計って買うなどという芸当はしないものだからです。

とはいえ、高くなったことを報道や販売広告などで知ると、しばらく様子を見ようとか、高くて手が出ないから中止だとかの考えに至るのは仕方ないことかもしれません。

しかし、前向きに検討している人の意欲に水を差す周囲の声があるとしたら、それを跳ね返す信念を貫くことも大事です。今日は、そんな声への反論を書こうと思います。


●買ってしまった人へ

最近のマンション購入者は、急騰した状態を知らずに買った人、そうらしいと知りながら買えるから買ったという人、どちらにしても合計で何万人もいますが、この人たちの家の将来価値はどうなってしまうのでしょうか?

この答えを導くためには、今後のマンション価格がどのように動くかを先に抑えておくことが必要です。

急騰した相場は、いずれ調整の時期がやって来ます。ここでは、ケーススタディとして次のように前提を置くことにします。

2016年(現在)を100とし、今後も更に上昇して東京オリンピックの2020年が120になったとします。その後は値下がりして、10年後の2026年には100に戻ったとします。

今年、新築マンションを100で買った人の10年後を考えてみましょう。築10年の中古マンションは、その時点の新築マンションに比べると、地域や物件固有の条件で異なるのですが、平均すると東京都区内は8掛けくらいになっています。

10年後の新築が100としたケースでは、10年中古は80となるわけです。つまり、20%値下がりするということです。

ケース2として、15年後に新築相場が120になったときの中古価格を考えてみましょう。

15年中古は、その時の新築相場の7掛け程度というデータ(23区の場合)があります。としたら、120×0.7=84なので、100で買ったマンションは15年後に84で売却が可能という理屈になるのです。

10年後が80で15年後が84。 これを読者の皆さんはどう感じますか?15年で84はともかく、10年後が20%ダウンの80と聞いて、どう感じるでしょうか?

そのくらいなら損はないと思う人、そんなになってしまうのかと思う人、その割合は分かりませんが、ここで筆者が支持するのは、前者の「損はない」です。

詳しい計算は割愛し、要点のみ述べることにします。

10年間に支払った総費用、大きなものは住宅ローン返済ですが、ご存知のように金利はただみたいなもので、大半が元本返済に回ります。従って、10年後の残債は大きく減少しており、20%安で売却しても銀行清算後の手取り額は意外なほどに多いのです。

ちなみに、30年返済で1000万円を借りた場合、金利は10年固定0.8%として試算すると、10年後の残債は約690万円となります。つまり、31%も減るのです

結果として、イニシャル費用(頭金・物件代金以外の諸費用・不動産取得税)の100%回収どころか、150%となる人もあります。150%になった人の場合、イニシャル費用を投資元本と考えると、10年間で50%の金利が付く金融債を買ったようなものです。

一方、150ではなく、90%しか回収できなかった人は、損ということになるのでしょうか?

この場合も、一概に損とは言えないケースが多いことが分かりました。

資金内容、ローン利用額などの条件によって大きく変動するので、ここでは試算例を紹介しませんが、総支払額と売却による入金額のキャッシュフローを計算して行くと、マイナス(支払い超過)になります。これを120か月で割り、借りた場合の想定家賃と比較してみると、メリットがある方が多いからです。


●高値掴みの場合はどうなる?

ここまでの説明は、あくまで平均的な数字を前提としたものです。10年後なり15年後の価格が80なり84になるという話でした。ところが、「平均80」の統計を構成する数字には、60もあれば100もあるわけです。

60になってしまうものと、80や100になるものとの差異は、いくつかの要因によって生まれるわけです。立地条件、建物価値、ブランド価値、管理状態などですが、中でも立地条件は大きく左右します。

最寄り駅から5分と10分の差もありますし、同じ5分でも線路沿いの物件と公園前の物件では価値が違います。

しかし、条件の悪い物件は購入価格も安かった可能性があります。

その反対もあります。問題は、中途半端な立地で建物価値も「普通」でしかないのに、同エリアの平均を10%も20%も上回る高値で販売された物件を買ってしまった場合です。そのような物件は、この3年くらいでは多数見られました。

仮に新築時に相場の2割高という高値掴み(120で購入)してしまったらどうでしょうか? 10年後に新築相場が100とするなら、相場の80となるような平均的な中古物件は80となり、これは購入価格120から見ると、80÷120なので34%もの値下がりになってしまいます。

次に、この中古物件が10年後に新築相場に対して90%くらいに高く評価されるような優良なものだったとしたらどうでしょうか?購入価格120から90になるので、それでも25%の値下がりになるのです。

優良な物件を手に入れることができた。将来が楽しみだと期待していたとしたら、裏切られるということでもあるのです。

勿論、少し高いかなと思いつつも、大規模な再開発が進んでいるので、購入価格より高値で売れるはずだと期待する買い手も多いのです。実際、そうなることもあります。

つまり、広域の平均では10年後も現状と変わらない100の新築相場になっていたとしても、特定の狭域では10年前より高い150にバリューアップとなる場合があるかもしれません。

そのような期待が大きいエリアの物件を120の高値で買った場合は、10年後の新築相場が150に対し、8掛けの120となれば、買い値と変わらない計算です。

もしかしたら、そのエリア内で最も駅に近く、付加価値が高い大型物件で、50階建てのタワーマンションであるといった同エリア内でも圧倒的な差別感がある物件なら、10年後の新築相場を超える価値と見なされる可能性も高いのです。 そのような物件なら、購入価格が120でも、10年後の新築150を超える160で取引が成立するかもしれません。

このケースは高値掴みではなかったという結果論で語られることになるのかもしれません。

こうしたケーススタディを多数してみると、僅か3年で平均20%以上も急騰した東京圏のマンションですが、そんな時期に買ったら損をするとは断定できないことが分かって来るのです。

とまれ、物件固有の条件によるわけで、どれだけ競争力のある物件を買ったかがカギを握るということになるのです。



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築2年で手放す人が続出のマンション [マンション市場]

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購入を予定している中古マンションの評価を依頼され調べて行くと、同エリアの取引事例で同一マンションらしいものが一定期間(1年)に多数並んでいることに気づきます

その築年数は、何と僅か2年か3年なのです。

これは、転売益を狙って購入した人が時機よしと見て売りに出したということなのでしょう。
短期間で多額のキャピタルゲインを得たらしいことも推測できます。

このようなケースにときどき遭遇します。2年前まではなかった現象です。購入した人も、2~3年で利益を上げられると予想していたかどうかは別として、価値ある物件と見て「買っておこう」と群がったのでしょう。

最近のご相談者から、「友人のマンションですが、10年前の新築時と現在の売却価格が同じらしいです。また、築2年程の友人マンションは新築売り出し時よりも価格がかなり上がっています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか」と質問されました。

お分かりのことと思いますが、マンション価格は新築も中古もこの2~3年に急上昇したためです。


●我が家が値上がりしても喜ぶのは早い

このブログでも何回か紹介して来ましたが、首都圏の新築マンションは過去3年で20%(坪単価)も値上がりしました。

わが家の値段が上がったと聞いて、嬉しくない人は少ないと思います。しかし、キャピタルゲインを狙って購入したわけではなく、あくまで自己使用のために購入し、実際今日も住んでいるのだとしたら、値上がりしても何の得もありません。

ただ、値上がりしたまま、あるいは一段と値上がりして数年ないし10年くらいを経過したら話は別ですね。つまり、数年先に買い替えのために自宅を売却しようとしたとき、高値で売れそうだと聞けば、瞬間的には喜ばしいことと思えるからです。

瞬間的と断った理由は後述するとして、買って2年もしないうちに10%も20%も値上がりしたという情報を得た人は、数年先の自宅の価値はさらに上がると錯覚してしまう、もしくは期待してしまうかもしれません。

しかし、中には「一時的なものだ」と冷静に受け止める人もあるかもしれません。そうです。これは一時的な現象なのです。

価格が同じ勢いで一直線に上がり続けることはなく、反対の値下がりもあり得るのです。問題は、売却を計画したときにいくらになっているかです。一時的に値上がりを喜べても、先では値下がり情報に触れて落胆するかもしれない。そう思うべきなのです。


●「中古は安い」が基本

千年も経過した骨董品や美術品の中で価値ありとされるのは、それが〇〇作の銘が残る芸術作品であるとか、稀少価値が高いことなどによります。 マンションでも30年以上を経過してなお、価値を維持し続けるヴィンテージと呼ばれるものがあります。

しかし、それは例外的なものであり、多くのマンションは建物の経年劣化によって、その価値を下げてしまうものです。 

事実、中古マンションは古くなればなるほど安い価格で取引されています。

見た目がよろしくないとか、室内のリフォーム代に何百万円もかかりそうだとか、リフォームの範囲が壁紙の張り替え等で済ませられる物件であっても、設備はひと昔前の型なので最新スペックと比べると見劣りします。

安くて当然です。ただし、マンションの価値は立地によって大きく異なるものです。都心のA駅から徒歩5分の築20年のマンションが、郊外のB駅から徒歩10分の築5年のマンションより高いといったケースはいくらでもあります。

ともあれ、同じエリア、同じような立地条件の中で比較した場合は、築20年マンションが築5年マンションより安いものです。


●中古になっても値下がりしないのは何故?

中古マンションは、新築価格との対比によって取引価格が決まる一面があります。その説明をしましょう。

同じような立地に同じようなマンションが建っています。一方は新築、他方は中古です。

新築が5000万円であるとき、中古は4000万円というふうに決まって来ます。

新築が2階で眺望が良くない、一方の中古は年数が浅くて14階で眺望がすばらしいといった差異があるとしたら、新築の5000万円に対し、当該中古は5500万円などと逆転する場合もあります。

上の例で、新築の14階は6000万円かもしれないので、眺望価値が並べば、やはり新築より中古は安いことになります。

同じ駅の徒歩10分圏内に、60㎡2LDKの新築が5000万円(坪単価@275万円)で分譲されているとします。

その新築マンションに70㎡の3LDKは存在しません。近所に築10年の中古の3LDK70㎡が売り出されました。何と価格は6000万円(坪単価282万円)です。

これも逆転の例です。物件の立地は、東京都下のM市で「「住みたい街ランキング」の上位によく入る駅が最寄りです。新築の供給は1年に1件あるかなしかの少なさで、たまに売り出される新築の間取りは広くても2LDKで殆どコンパクトタイプばかりです。M市に住みたい人は、中古を探すしかありません。

このような事情から、3LDKの中古は稀少価値が高く、新築並みの単価で取引されます。

話を戻しましょう。

新築より高い中古といえども、購入額がどのくらいだったかは不明です。元々が高値だったかもしれません。としたら、高値としても購入価格に上積みされた金額であったとは断定できないのです。

ここまでに述べた個別要因はさておき、エリア全体で購入時の価格から値上がりする中古が続出するというときがあります。値上がりする理由は、結論を言ってしまうと、新築相場が急騰したからです。

この3年(2013年~2016年上半期)、東京は平均で約20%(坪単価)も上昇しました。

2012年に5000万円であった新築相場は、今年は6000万円出さないと買えないということになってしまいました。

2012年に5000万円で新築マンションを契約した人が2013年に入居しました。それから3年の今年、同じマンションの同じ間取り・面積の家が売りに出されていることを知ったとします。

価格は、何と5500万円です。「階は違うが、こんなに高く売れるんだ」と驚くともに、「我が家も今売り出せば儲かっちゃいそう」などと、取らぬ狸の皮算用をして思わずほくそ笑んでしまいます。

実は、これでも近くの新築マンションより安いのです。築3年の中古だから500万円安いというわけです。新築が上がれば中古も上がる。この構図はデータで立証されています。

最近のような短期間に大きな価格上昇が起こると、その恩恵を受ける人が増えます。2010年~2012年頃に購入した人は、みなさんそうかもしれません。

●手放すと住む家がなくなってしまう?

短期間の値上がりを喜ぶとともに、利益確定のために売却したとしたら、投資家はともかく、住んでいた人は売却後どこへ行くのでしょう?

わが家がいくら値上がりしても何も得はないと述べましたが、売却すれば話は別です。

転勤命令が出た。さあ家の処分はどうする?貸すか売るかで悩むことになります。折角気にって買った家だし、転勤から戻ったら、またここに住みたい。その間は賃貸すればいいが、でも何年で戻れるか分からないしなあ。反対に、売ってしまうと、戻ったときに同じ予算で買えるかどうか分からないし、住宅ローンも年数が違って来る、などと。

それでも、あっさりと売却を決める人もあります。5000万円のマンションを頭金1000万円で買ったAさんは、3年後に5800万円で手放しました。ローン残債は大きく変わらない3900万円でした。さらに仲介料・約180万円を支払ったので、手にした金額は1720万円でした。 頭金1000万円が1720万円に化けた格好です。その他の費用・税金など厳密な計算をすると、もう少し減りますが、ざっくりと言えば3年で1.5倍くらいに増えるという利殖に成功したことになるのです。Aさんの場合、転勤先では会社が社宅を用意してくれるので、住む家に困ることはないのかもしれません。


そう言えば、筆者へのご相談者の中にこんな方もありました。東京都心のタワーマンションを買い、1年もしないうちに高値売却。今は千葉県の某駅の中層マンションに住んでいます。何でも、通勤には問題なのだとか。 購入予算は3000万円も少なく済んだと喜んでいます。物件価格の差と、売却によって得た利益のダブル効果の買い替え劇を演じたようです。1年ほど前(2015年秋)の話です。

売却を思い立ったきっかけは、投げ込まれたチラシだったそうです。チラシには「当マンションを買いたい人が外国人を含めて多数あり。できるだけ上階を望みます」と書き込んであったのだとか。


もう一例。日本橋のマンション2LDKを買った独身のOLさんのケース。今売るべきか、もう少し待って高値で売るべきか。それとも売らずに持ち続けた方がいいかというご相談でした。

筆者の回答レポートを読んで悩んだ挙句、OLさんは入居後1年少しで売却を決断しました。1年半くらい前(2015年初頭)のことです。元の狭い賃貸ワンルーム生活に戻るというのです。荷物の多くが実家に預かってもらうのだとか。

利益確定によって、OLさんは預貯金を大幅に増やしたことでしょう。それにしても随分思い切った決断をしたものです。単身だから身軽?そのような次元の話ではないと思いますが、本当にすごいと感心したものです。

次の購入タイミングを見計らいながら、今度はどこにどのような物件を購入なさるのか、何年か先のお便りが楽しみです。



 ・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。


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「マンションの寿命は人間の寿命より短い」としたら [マンションの未来]

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

先週(2016年8月31日)NHKの「クローズアップ現代プラス」という番組で「老朽化したマンションを建て替えるか修繕しながら住み続けるか」という特集をしていました。
※放送をご覧にならなかった人は、以下でチェック
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3855/1.html

筆者がいつも考えていることであり、注視して来たテーマ「マンションはいつまで住めるのか」に関連があるかと思い、途中まで視聴したのですが、最後の方はチャンネルを切り替えてしまいました。つまり、番組は筆者の期待を裏切る内容だったのです。

番組のテーマはマンションの建て替えが円滑に進むようにマンション法(建物の区分所有等に関する法律)の改正が行われる見込みだが、その場合の影響(功罪)を問うものでした。

すなわち、マンションの建て替えには従来、全所有者の80%(5分の4)の同意が必要とされて来た法律を、3分の2の賛成があれば可能とする法改正が検討されているのですが、その効果は期待できるのか、また法改正について老朽マンション住民(所有者)はどう受け止めているのか、その辺りを番組は掘り下げようとしたようです。

法が改正されようとされまいと、建て替えには事実上100%の賛成がないと難しいのが現実です。その合意形成まで、早くても10年はかかるとされます。建て替えられたマンションの実例は全国でまだ200件余しかありません。

建て替えを要するような老朽化したマンションが全国で何件あるかの統計はないのですが、東京都内には24,254件の分譲マンションがあり、そのうち築40年を超えるマンションは2,288件で、1割弱に当るというデータがあります。渋谷区・港区・世田谷区・杉並区が、それぞれ200件強と多いようです。全国では56万戸だそうです。

これらのデータから、建て替えの件数がいかに少ないか、何となく想像いただけることと思います。

今日の本稿のテーマは、建て替え問題ではありません。古いマンションに長く住み続けることの難しさについて語ろうと思うのです。


●マンションの寿命は何年?

筆者へのお尋ねで多いことのひとつ、それは「マンションの最後はどうなるの?」です。

早い話が、マンションの寿命は何年かという質問です。これに的確に答えられる人は筆者も含めて見当たりません。答えられなくて当然とも言えるのですが、その理由は次のようなものです。

➀マンションの歴史が短い・・・日本に分譲マンションが登場したのは昭和30年代(1950年代)のことです。まだ60年の歴史しかないのです。

②黎明期の集合住宅は殆ど解体されてしまった・・・分譲マンションということでなく賃貸の集合住宅というくくりで見ると、関東大震災後の復興住宅として東京、横浜に20軒以上建設された「同潤会アパート」は、最後の上野の場合で80年後に解体され、分譲マンションとして生まれ変わりました。つい3年ほど前のことです。

➂存命の集合住宅は廃虚状態にある・・・同潤会より古い集合住宅も実はあるのです。長崎の端島(通称:軍艦島)という無人島に今は廃虚として存在しています。「世界文化遺産」として登録されたので脚光を集め、ご存知の読者も多いことと思います。

この集合住宅は建て増しを繰り返したので正確な年数は不明ですが、明治時代から昭和初期にかけて建てられたので、100年以上の歴史があると言えます。

④長寿命のマンションを建て始めて30年程度しか経っていない・・・戦後・高度経済成長時代」、後先考えずに量を追った国の政策が、「量より質」へ転換し始めたのは1980年代半ばでした。100年(3世代)住み続けられるマンションを目指そうとしたのです。センチュリーハウジングシステムという用語が生まれ、現在の「長期優良住宅」へと受け継がれています。

➄計画的な延命策を講じ始めたのも最近20年くらいのことである・・・マンションごとに「長期修繕計画」を策定しようという業界の動向、これを下に周期的な大規模修繕を実施して長く住めるようにしようという所有者の意識改革も生まれつつあるようです。


コンクリートの物体としては100年以上存在していますが、人が住んでいた期間で言えば、同潤会アパートが最も長くて約80年です。

しかし、その同潤会アパートも最後はとても住める状態ではなかったはずです。だからこそ建て替えに至ったわけです。同潤会アパートで最も有名なのは「青山アパート」で、今は安藤忠雄氏設計で有名な「表参道ヒルズ」に生まれ変わりました。建て替え前の姿をご存知の人も多いことと思いますが、同アパートは住まいではなく店舗になっていたのです。

さて、これからのマンションの多くは100年居住が可能になるのではないかと思いますが、特に2000年以降に建設された分譲マンションに期待できそうです。

耐久性の高い建物を設計・施工するという販売者(分譲主・事業者)の姿勢と管理会社の協力による住民の管理意識の高まり、それに伴う周期的な改修工事の実施などが奏功するに違いないと思うからです。


●60年程度の寿命しかないものも多い

100年耐久マンションが増えると述べたことを覆してしまうようですが、全てのマンションがそうだとは言えません。3分の1から半分くらいは50年か60年しか住めないマンションも出てくる可能性は排除できないからです。

正確に言えば、住んで住めないことはないが、50年を経過すると快適とは言えない状態になってしまうマンションがなくなるとは思えないのです。

住んで住めないことはない状態とは、どのような状態を指すのでしょうか?

一戸建ての場合、古くなると家は傾き、雨漏りが発生し、建具の変形がおき、すき間風が入り込むものという常識があります。そこで、あちこち修繕しながら建て替えを先延ばしして50年くらい住み続けるわけです。しかし、老朽化に伴い、たびたび修繕のための出費が嵩みます。ときには多額の費用がかかります。

これは、マンションでも同じです。木造と違って、すき間風は入らないでしょうし、よほど強い地震に何度も遭遇しなければ傾くこともないでしょう。しかし、設備は無論のこと、配管や建具、床材、壁紙などに機能不全、故障、変形、破損などが同じように起きます。

一戸建てにはないエレベーターや共用玄関のエンジンドア、パーキングシステムなど機械の故障になると、マンションならではのものです。

人間に例えると、骨密度が粗くなり、筋肉は衰え、耳は遠く、歯が欠け、噛む力も衰え、内臓機能は低下、食欲も減退するのが天寿を全うする直前の人間の姿です。

中には、持病に苦しんで病院通いが日課のようになってしまった高齢者も少なくありません。

運動や食事に配慮し健康的な生活を送り続けても、人間は120歳以上生きることはできません。

ご存知、日本人の寿命は90歳未満です。40歳で新築マンションを購入した人が、90歳を迎えるときに50歳のマンションに住んでいたとして、そのマンションが健康体でないというのは不快なだけでなく、ストレスの元になるかもしれません。

できれば、まだまだ何も問題なく快適に住み続けられる状態のマンションであって欲しいものです。



●ヒトの寿命が来る前にマンションの寿命が来る?

仮に40歳で築20年の中古マンションを購入し、90歳まで住むと仮定したら、マンションは築後70年です。築後50年くらいから、つまり自分が70歳のころから建て替えが話題に上ってくるケースもあることでしょう。

そのとき、「工事中どこかに仮住まいし、完成したら戻って来る。そんなのは面倒だ。いろいろ不具合が出ていることは承知しているが、このままでも十分住める。 私はもう自分の寿命も終わりが近づいているので、静かに暮らしたい」、そう言って建て替え計画に反対するかもしれません。

入居者の中には、築40年くらいの時点で購入して住む若い世帯もいて、建て替えに賛成する人もあるかもしれません。

何回も住人同士の話し合いが設けられ、合意を得るのに10年、長いと20年もかかるようです。

とすると、建て替え問題で話し合いが繰り返される途中、着工に至らないままあの世に行くことになる住民もあるかもしれません。

つまり、マンションの寿命の方が長いことになるわけです。

ところが、視点を変えると、逆のケースもあります。余命たっぷりの若い所有者もあるからです。若い所有者は、購入時に自分より余命が短いマンションであることを知っているのです。


●寿命が近づいているマンションにいつまで住むか?

築20年くらいの中古物件を購入した場合はどうでしょうか?
35歳のあなたが購入したとすると、30年住んで65歳のとき、築後50年に達したマンションは寿命が近づき、建て替えの話が出てくるでしょう。しかし、住人のあなたはまだ壮年ですから、そこからあと20年以上は住みたいと考えるかもしれません。

築50年のマンションの修繕費は嵩む一方でありながら、このままではスラムに発展する恐れもあるので、積極的に建て替え計画に賛同したとします。

しかし、建て替えには当然ながら多額の費用がかかります。これは積み立てられているわけではありません。入居者個々のふところ具合は異なります。どのようにして費用を捻出するのでしょうか?

マンションの建て替え費用を生み出す魔法があります。

それは「容積率の増加(緩和)」が前提となります。例えば最初1,000坪あった建物延べ面積が2,000坪まで建てられる条件(許容容積率の2倍増しなど)ができた場合に、増えた建物部分を売却することで費用を生み出すことが可能になるからです。

1,000坪のマンションを2倍の2,000坪に増やす、そんな魔法はどこでも通用する話ではありません。法律の改正、都市計画の変更などがあって可能になるのです。また、ここでは詳しく述べませんが、建築計画次第では容積率のボーナスがもらえることもあります。

しかし、容積が増えて建て替えが可能になったとしても、住民の合意形成(法律上、現在は80%以上の賛成を得ること)は困難で、1年や2年で簡単にまとまるものではありません。

もともと修繕費の高い中古マンションに住んで来たことでもあり、今後は更に上がる可能性もある。しかし、建て替えも面倒な話だ。そう考える人は、さっさと売却して存命中に同じ問題にぶつからないような、例えば古くても10年以内のマンションか、広さや場所などの条件が幾分悪くなっても「修繕費の負担が少ない新築マンション」を買って住む道を選ぶかもしれません。

または、自分一人の意思でどうにでもなる「古い一戸建て」でも購入し、メンテナンスやリノベーションを趣味のひとつにするくらいのつもりで移り住むといった道を選択することも考えられるわけです。

つまり、中古マンションを購入した場合は、新築マンションを購入した場合以上に、そこに永住することは難しいということになりそうです。

●住まいは、そのときの事情に応じてフレキシブルに!

自分の寿命が何年かなんて分かるわけではないですし、そのほかのことを含めて何十年も先のことなど予測がつきません。

もちろん現役でいる間は転勤や転職があるかもしれませんし、家族の誰かの事情で不都合な住まいになることはいつでもあり得るわけです。

その意味から、いつでもスムーズに売却できるマンションを購入しておくことが肝心です。

どんなマンションでも売れないことはありませんが、できたら高く売りたい、有利に売却したい。そう考えるのが人情というものです。

であれば、希望価格を大幅に下げなければ売れないようなマンションだけは掴まないようにしなければなりません。

とりわけ、建て替え問題を抱えているような古いマンションを買うのは、多分に冒険と言えるでしょうし、売却する立場でも高くは売れないと考えるべきです。

もっとも、再開発の区域にあり、業者等が買収に動いているような物件なら別かもしれませんが。


 ・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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そこで得られた知識は、良い間取りを選択するときやカスタムビルドの間取りを自らつくるときにも大いに役立つはずです。

また、少なくとも、住んでからダメ間取りに気付いて後悔することがないようにするための一助ともなるはずです。
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