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天災は忘れた頃にやって来る [マンションと地震]

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。



1995年1月17日、阪神淡路大震災の起こった日です。あの日、神戸や西宮、芦屋尼崎宝塚などの大阪市以西の各都市では、一戸建て住宅の過半がペシャンコになり、高速道路が倒壊、昭和40年代の古いマンションの多くが全壊・半壊しました。

昨年は熊本県を震度7の大地震が襲いました。しかも、本震の後に余震でなく同規模の本震が来るという、前代未聞の現象でした。驚かされたのは、被害者だけでなく気象庁をはじめとする専門家だったのです。

天災は忘れた頃にやって来ると言います。阪神淡路大地震は千年に一度と言われました。今回の熊本も百年ぶりの大地震だったそうです。

地震発生から半年を経た2016年10月9日のNHKスペシャルは衝撃でした。ご覧になった読者も多いことと思いますが、熊本地震の被害住宅の中に「全壊」認定された新・耐震基準のマンションがあったからです。

熊本地震は、震度7の激震が続けて2度も起きたためもあったのでしょうが、想定外の被害がいくつも発生したということでした。

最初の地震(前震)では倒壊しなかったが、2度目の地震で崩れ去った一戸建てがあったということや、耐震基準を満たしているはずの新しい一戸建てさえ倒壊したということを地震直後の報道で知っていましたが、マンションでも「全壊」認定が1軒あったというのは知りませんでした。

その半年前のニュースで、熊本市の応急危険度判定で「危険」を示す赤い紙が貼られたマンションの映像を見ました。また、倒壊は免れたものの、建物を支える柱やはりの一部が壊れ、鉄筋がむき出しになった映像も流れました。

住民のほとんどが避難を余儀なくされており、所有者への取材では、「避難しているのは水道管が壊れたうえにエレベーターも故障して生活できない状況だから」というものでした。

その後しばらくして、分譲マンション管理会社の業界団体である「マンション管理業協会」が被災状況を取りまとめていますが、それによると、管理受託している7,610棟のうち回答があったのは、5,973棟、内訳は、大破が1棟(0.02%)、中破5棟(0.08%)、小破151棟(2.53%)、軽微53棟(0.89%)、被害なし5,763棟(96.48%)となっています。

日本建築学会による5段階で評価されており、「崩壊」、「大破」、「中破」、「小破」、「軽微」の5つです。

当該報告では、「崩壊」という「柱・耐力壁が破損し、建物全体または建物の一部が崩壊に至った」被害報告はないとのことでした。

しかも、新旧の耐震基準で区分していないので、大破の1棟も中破の5棟も、勝手に旧・耐震基準による古いマンションなのだろうと筆者は思い込んでいました。それだけに、番組は驚愕の内容でした。


映像は、コンクリートに穴が開き、壁の向こうが見えてしまう状態を示すものでした。
専門家(大学の教授)の説明によれば、新耐震基準であっても、耐震性は地域によって違うのだというのです。ここが筆者の知らなかった恥じ入る部分で、衝撃でもあったのですが、「地域係数」という概念があって、基準の耐震性に地域ごと0.9とか08といった数値をかけてよいことになっているというのです。

つまり、耐震基準の0.9倍とか0.8倍の弱い建物が合法的に多数建設されているということでした。地域係数は昭和27年に市町村ごとに定められており、地震の起きやすい地域は1.0、地震が少ない地域は0.9となっていたのです。

熊本は0.9以下の地域だったのです。

長く大地震がないとされて来た地域で起きた想定外の大地震、しかも震度7の本震が2度も立て続けに。被災者・被災地域の行政庁はもとより、気象庁など国の関係機関や大学などの研究機関、建設業界などに与えた衝撃は想像を絶します。

ちなみに、番組では日本地図を1.0地域と0.9地域に色分けして示していましたが、一瞬テレビ画面を通して見た記憶では、関東と東海、新潟は1.0地域でした。

なお、福岡は、かつて0.8の地域だったそうですが、2005年(平成17年)に発生した玄界灘地震(福岡県西方沖地震)を機に条例を改正し、1.0に変更したのだそうです。

熊本地震の被害者にはお気の毒ですが、係数0.9と定めた地方自治体が悪いということになったようで、現・耐震基準は震度7でも大丈夫であることを証明した格好になり、基準の見直しはしないと後に国は宣言しています。

1981年に施行した現・耐震基準は、その3年前に起こった宮城県沖地震の教訓から大きく改められました。1995年の阪神淡路地震後も、部分的な改定が行われたと記憶しています。


私たち日本人は災害のたび、二度とこのような被害を受けないよう願って、様々な対策を講じて来ました。三陸沿岸の各地にある津波対策の堤防も、数十年前の津波体験から設けられたのだが、想定外だったと何かの本で知りました。

翻って、東京でも伊勢湾台風(昭和34年、愛知県)の際に、伊勢湾に干潮面上約5メートルの高潮が襲来したことを教訓に、東京都では、昭和35年から高潮防御施設の建設を計画し、対象区域を東京港全体に広げて建設工事を実施しています。そのおかげで津波も大丈夫と聞いたことがあります。

しかし、人間は忘れっぽい動物です。恐怖の映像を見たくらいでは、地震や津波の怖さは忘れてしまうのかもしれません。

自然災害ではありませんが、2015年10月に露見した横浜市の傾斜マンション事件。まだ1年半しか経っていないのに、もう忘れてしまった人も少なくないようです。

人間の寿命から見て、千年も前のことは誰も覚えていないのですから、対応ができていないのも仕方ないのかもしれませんが、1年半年前の事件は言わずもがな、20年くらい前の事件や天災なども忘れずにいたいものです。

流行は短いものですが、マンションを購入するとき、地盤、杭工事、耐震性、遮音性、耐久性などと、売主の施工管理・品質管理体制などを厳しく問う買主の姿勢は不易であるべきです。

とはいえ、若い買い手の中には、阪神淡路の被害状況でさえ記憶にないという人もあるでしょうし、首都圏の人にとって阪神淡路の記憶は薄いということかもしれません。

10年も経ったら、事故や事件、天災を教訓とするチェックポイントなど、忘れ去られてしまうかもしれません。まして、何も覚えていない、体験がない若年層の買い手にチェックを求めても無理がありそうです。

耐震診断すら受けていない旧耐震基準のマンションを検討するとき、少しは「大丈夫かな?」と思いながらも、「40年以上も無事に存在したマンションなのだから」と自分に言い聞かせて買ってしまう人がいるのは確かです。

旧耐震基準のマンションは全て危険と決まったわけではないものの、耐震診断を受けていない以上は安全を保証されないはずですから、敢えて危険なマンションを買うことはないと思います。
35年間、東京には震度6強以上の巨大地震が来なかっただけです。

「天災は忘れた頃にやって来る」ものです。天災や欠陥マンション事件の記憶がない人も、自分で作る「マンション購入時のチェックポイント表」の項目に「品質管理は大丈夫か?」と「耐震性は問題ないか?」を加えておきましょう。


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今から考えておきたい老後の住まい [マンション購入アドバイス]

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。


初めてマイホームを買おうかという人に老後の住まいを唱えても意味がないと非難されそうですが、そうとも言えないと支持して下さる方も少なくないので上記テーマで書くこととします。

若い人の中にも、定年後を見据えて蓄財や投資に励む人が少なくありません。

30年先の世の中がどうなっているか、自分の身の回りがどう変化しているかを想定しつつ、どう変化していようが資産を豊富に持っておいて邪魔なことはないはず。そう考えて生涯の資産形成計画を実行しているのでしょう。

計画的な人たちには、老後の住まいのことも念頭にあるようです。頂くメールに「永住のつもりで考えていますが、一人になったら老人ホームに行くこともあるので、そのときの資金になるかどうか?儲からなくてもいいが、大損しないマンションかどうか?」といったお尋ねが多く見られます。

今日は、価値あるマンションの選び方について論じるのではなく、前提となる「老後の住まい」のカタチを考えてみようと思います。



●ライフスタイルによって選択肢はこのくらいある

住まいの形態から考えてみると、「子供と同居か近居する」、「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者住宅」などに入居する

住む場所の観点では、「故郷に帰って住む」、「子供の住む街へ行く」、「郊外の住まい」、「都心・準都心に住む」などとなりましょうか。

選択肢によっては、資金があまり要らないもの、多少はかかるもの、多額の資金が必要なものと分かれるはずです。

資金とは、入居金や購入資金などの一時金だけでなく、毎月の生活資金も必要ですし、それが年金だけでは足りないと想定することが必要なのかもしれません。
貯蓄などの金融資産、退職一時金、不動産などが原資となりましょうから、何を置いても資産形成が必要になりますね。

「リバースモーゲージ」の活用も考えてもいいでしょうか。みずほ銀行が2015年1月からマンションも対象にしています。メガバンクでは初めですが、東京スター銀行は従来からマンションも実施、地方銀行でも一戸建て中心に取り扱っています。

自治体では、武蔵野市が20年以上も前から一戸建てを対象にリバースモーゲージを市民対象に融資していると聞きます。

資金のことはさておき、高齢者専用ホームを除いて、老後の住まいの選択肢を整理しておきましょう。

<一戸建ての「改築」>
子供が独立し夫婦二人だけになるなら、間取りを変えて趣味を楽しむ部屋を設けたり、余った部屋を独立させて部分貸ししたりする

<不便な一戸建てから駅前マンションに移住>
駅からの道が遠く坂道でもあるので、不便で体力的にもつらくなるから、駅前のマンションに住み替える

<二世帯住宅を建てて子世帯と同居> 
孫の面倒を見られる子世帯との同居は願ってもないカタチ。子世帯から見れば孫の世話を頼めるので、夫婦ともに働けるので理想的な住まいになる

<郊外・田舎でスローライフ
都会暮らしに飽きたから、郊外の自然豊かな地域に中古住宅を買って住み替える
 
<都心でアクティブライフ>
老後の暮らしを豊かにするには、旅行に行きやすい空港や新幹線駅に近い街や、観劇や美術鑑賞が楽しめる東京都内のターミナル駅にすぐ出られる街に住み替える。

<別荘でスローライフと刺激的な都会ライフの複数ハウス生活>
長く都会暮らしをしていると田舎暮らしは退屈だ。そんなときは、いつでも帰る家が都会にある。そんな二重生活も悪くない。

●マンションか一戸建てか
ところで、田舎暮らしであろうと、都会暮らしであろうと、また老夫婦だけか2世帯住宅かを問わず、家の形態はマンションでも一戸建てでもいいはずですが、どちらがふさわしいのでしょうか?
そこで、ここからは一戸建てかマンションかについて、触れておきたいと思います。

一戸建て住宅には何もしない自由というものがありますが、マンションには共同住宅ゆえに拒否できないことや煩わしいことも少なくないのです。

例えば、家の修繕です。一戸建てなら放置する自由がありますが、マンションではそうもいきません。管理費や修繕積立金を毎月納めなければならないことに経済的な負担を感じる人もあるでしょう。

防災訓練も近所付き合いも面倒だと感じる人もあるかもしれません。

それでも、老後はマンション暮らしがいいという人が多いらしいのです。

<50歳以上の住み替え希望者は半数がマンションを希望>
2015年1月、首都圏在住の50歳以上を対象に調査したところ(調査機関:長谷工総合研究所)、住み続ける人と住み替えを希望する層では、住み替え希望は15.8%に上っています。

住み替え派のうち、マンションへの住み替えを希望する人は50.4%(所有42.3%、賃貸8.1%)と、半数を占めていることが分かりました。

マンション居住者で一戸建てに住み替えたいという回答も31.2%あるのですが、マンションへの住み替えを希望する人が54.3%(内、賃貸は6.0%)と半数を超えます。

注目すべきは、一戸建て居住者のマンション住み替え希望者が45.9%(内、賃貸10.4%)と半数近い点です。

<高齢者に安心なマンション>

段差のない家 カーシェアリングで車の利用も可能。マンションでしか備えられない設備(宅配BOX・ディスポーザー・AED・24時間有人管理・防災用の各種備品)とコンシュエルジュによる生活サポート・厳重なセキュリティシステムなどがあると老後は安心です。

近隣住民とのトラブル解決に管理人などがクッションになってくれる、災害時の共助システムなどもマンションでは一般的です。 


<高齢者が安心して住めるマンション>
筆者は、大型マンションがシニアにとって価値あるものになり得るのではないかと随分前から思っています。、管理ソフトが付加される大型がよさそうです。

マンション住民は入れ替わりがあるというものの、20年以上住み続ける人も多いので、
住民の50%は定年に達したなどというマンションも今後は増えていくと考えられます。

筆者がかつて15年ほど住んだマンションのお隣さんは、最後は80歳過ぎになられていました。お一人だったので、いつも寂しそうにしていたと家内は語っていました。

最近、中堅のあるマンションデベロッパーが「シニア専用マンション」を多数手掛けていることに気付きました。いわゆる老人ホームではなく、普通の分譲マンションをシニアのニーズに応える付帯施設とサービス体制で販売するというものです。

宣伝文句によれば、「コンシェルジュサービスと医療サービス、介護サービスという充実のサービスを整えています。各サービスは、それぞれの分野に精通したスタッフが従事。すべてのスタッフが、皆様の健康状態などの情報を共有し、各分野での連携を図りながら、きめ細かく手厚いサービスを提供します」とあります。

筆者のイメージに、このようなシニアを隔離するような専用マンションの形態はありません。筆者もいずれは後期高齢者の仲間入りをすることは間違いないのですが、そのときが来ても「同病相憐れむ」のように群れに加わるのは抵抗があります。若い世帯との交流は人生を楽しむうえで不可欠と思っているからです。

しかし、米国などには、元気なシニアを対象とした「リタイアメント住宅」が数多くあるのだそうです。いくつかの形態があるようですが、ひとつは個々の住宅は独立しており、タウンの中に共同で使う施設や敷地を交流の場としているシニアタウンがあると雑誌で読みました。

他人との緩やかなつながりを保ちながら、孤立や孤食を防ぐという観点では価値があると思いますし、それも選択肢にあってよいとも思いますが、個人的な希望を言うと、老若男女がひとつの世界・ひとつのコミュニティの中で生きていたい、それが自然なことと考えています。

シニアを区分した調査データが見つからないので確信はないのですが、大型マンションに住めば、シニア同士でも、または幼児を含めた多段階の年代層との交流の機会も得られるのではないか、そんなイメージを抱いています。


●修繕積立金が課題か?
マンションは、毎月の固定的なランニングコストが問題になると言われます。新築分譲時の初期設定は専有面積1㎡当たり100円でも、30年先には5倍の500円になる計画が少なくありません。

500円ということは、70㎡なら35,000円です。これに管理費が15,000円かかるとすると毎月黙って50,000円の出費となるのです。

一戸建てなら、この費用がゼロです。おまけに自家用車を買っても駐車料金は一切かかりません。

だからマンションは損かというと、そうとは言えないと思います。一戸建てでは得られない有形・無形のメリットがマンションにはあるからです。

しかし、管理費等のコストは少ない方が良いわけですから、メリットとコストを天秤にかけて物件を選ぶほかないのかもしれません。


●人生90年時代の老後資金を生むマイホーム選び

老後の生活資金を年金で賄える時代ではなくなるかもしれないという論調の報道には、もはや驚かない昨今です。

生産人口が減って、高齢者を支え切れないのですから、今後は年金受給年齢が遅くなったり、受給額を減らされたりするのは確実と言われます。

国民の多くが将来の生活設計に不安を感じつつ、「年金制度の崩壊」を諦め半分で受け止めているようにも感じます。

老後をどこで暮らすか、どのような形の家で暮らすか、その解が何であるにせよ、若いときに選ぶマンション(一戸建て)が資産形成に役立つものである方が良いに違いありません。

価値あるマンションの選び方に不可欠な情報と研究成果を、筆者なりに今後も発信して行こうと思います。



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新築マンション市場の現況と展望 [マンション市場]

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。


値上がりが続いて来た新築マンションも、ようやく頭打ちになって来たようです。しかし、下がる傾向はまだ見えません。2016年1月25日の記事「2016年のマンション(新築)市況を振り返る」でも少し触れましたが、もう少し掘り下げつつ今後を占ってみようと思います。


●新築マンションの価格動向

昨年1年を振り返ってみます。(データ出所は不動産研究所)

経過を見ると、上半期は前年同期比で9.2%の上昇(坪単価)でしたが、下半期は前年割れの月が何度も出て、結局は年間で+1.8%とわずかな上昇に留まったのです。
2017年に入って、1月は前年同月比24.8%の大幅上昇、2月も同2.0%の上昇となっています。

1月の中身は、23区が牽引した格好でした。タワーマンションの上層階プレミアム住戸と、いわゆる全部が億ションの高級物件を合わせて、高額マンションが多数売り出されたため、単価も平均で@435万円(前年1年の平均332万円)と比べると30%も上がり、1戸当たりの価格も9148万円と、同6629万円から+38%と大きく上昇しています。

1月は特殊な月だったようです。

2月の1戸平均価格は23区だけを取ると5793万円と、前年同月比で20万円(0.3%)アップ、坪単価は2.0%アップとわずかな上昇に留まりました。


●新築マンションの供給状況

2016年の供給戸数は、35,772戸と前年2015年の40,449戸に比べ11.6%減少しましたが、この数字はバブル崩壊後の1992年以来24年ぶりの低水準です。

所得が伸び悩む中、人手不足に伴う建築費の上昇でマンション価格が高騰した結果、需要が冷え込み、業者が発売を絞る動きが広がったためと考えられます。前年割れは3年連続となっています。

2000年から2016年までの供給戸数の推移を見ると、実に興味深いデータが表われます。

2016年:35,772戸、2015年:40449戸、2014年:44,913戸、2013年:56,478戸、2012年:45,602戸、2011年:44,499戸、2010年:44,535戸、2009年:36,376戸、、2008年:43,733戸となっていますが、過去9年間の平均は43,595戸です。

これに対し、それ以前の8年は、平均82,706戸だったのです。
(2007年:61,021戸、2006年:74,463戸、2005年:84,148戸、2004年:85,429戸、2003年:83,183戸、2002年:88,516戸、2001年:89,256戸、2000年:95,635戸)

47%減、大雑把に言えば、10年前の半分に減ってしまいました。


●何故こんなに減った?

どうしてこんなに減ってしまったのでしょうか?考えられることは次の通りです。

➀売れないから発売戸数を絞っている
マンション販売は、1期・2期・3期と「分割して売り出す」というのが常套手段です。50戸程度の小型マンションでも一気に50戸全部を売り出さず、3回なり5回なりに分けて、大規模になると、最後の方は一体何度目の売り出しかかが分からない「小出し分譲」が常態化しています。

この戦略を採るには深い理由があるのですが、それはさておき、50戸売り出して40戸が売れ残るより、10戸売り出して完売させる方を選んでいるのは事実です。

つまり、売れそうな戸数しか売り出さないという手法なのです。昨年の供給戸数が24年ぶりの低水準だったのは、販売にかけることが可能な住戸が多数ありながら売り出さなかったわけです。それは、工事中であり、完成していても、そう遠くない将来売り出されることは確実です。

販売しないで凍結するとしたら、賃貸資産に換えるということになるのですが、その選択は滅多にないものです。分譲マンションだから買ったのに、いつの間にか半分が賃貸マンションになっていたとしたら、買い手の反感を招くことになるでしょうし、決算数字にも大きな影響を与えるからです。

着工済みのマンションは、遅まきながら販売されるでしょうが、翌年度に繰り越されて行く戸数が増えてしまうことになるはずです。

未発売住戸が多数にのぼれば、次の新規販売物件の着工を止める、つまり土地だけ寝かすということはあり得ます。

短期的には「売れないから」が妥当な分析であるとしても、この9年間が低水準だったことの説明には不十分です。

②供給の担い手が減っている
作り手がいなくなったのです。2008年秋に起きた「リーマンショック」は世界金融危機と世界同時不況を招きました。

日本も例外ではなく、百年に一度の不景気が来るとの危機感が広がり、とりわけ金融機関はバブル崩壊の過程で巨額の不良債権を抱えてしまった経験から、守りの姿勢を強めました。

その影響を最も強く受けたのが、負債比率の高い中小マンション業者とゼネコンでした。
マンション供給戸数で一度は最大手「大京」を抜いて全国一位になった穴吹工務店を筆頭に、個性派のマンション業者が、株式上場企業も含めて銀行から資金を止められ、多数倒産してしまいました。

大手は大規模や高額高級マンションを、中小は大手が手を出さないエリアと中規模以下のマンションをと住み分けしていた業界でしたが、その構図が崩れ、中小業者の分がごっそりと減ったのです。

➂適地がない

三番目の理由は、用地の取得ができなくっていることです。

良い土地が中々ないと嘆きながらも用地を確保し、マンション供給を続けていた業者に強い順風が吹いた時期がありました。バブル崩壊後の地価下落過程で、法人・団体は一斉に土地を放出し出したのです。

それまでは一度取得したら手放さないで抱え込むことが「日本式の含み経営」のメリットであり根幹をなすものでしたが、右肩上がりの土地神話が崩壊し、並行して会計基準が国際化されたとなどによって、方針転換する企業が続出しました。

社宅、グラウンド、工場、倉庫、資材置き場、廃校や移転で空いた学校など、マンション業界にとって垂涎の土地が次々とマンション業者の手に渡りました。1995年頃から、ある種のブームのように数年間続きました。その結果、バブル期には殆んど途絶えていた(※)と言って過言でない新築マンションが息を吹き返したように多数開発され、市場に送り出されたのです。

(※1991年の首都圏全体の新規発売戸数は、2016年の戸数35,772戸も下回る26,248戸と低水準だったのです)


●新築需要はどのくらいあるのか

ところで、先にみたように、最近9年間の平均43,595戸という供給戸数は、それ以前の半分というレベルですが、需要はどのくらいあるのでしょうか? 売り出しても売れないから供給戸数を絞ったというのは、それしか需要がないからではないのか、そんな疑問も残ります。

価格急騰が需要の減退を招いたのは確かですが、需要が喪失したのではなく、一時的に地下に潜っただけです。価格と購買力のミスマッチが解消されれば再び頭をもたげて来るに違いありません。

こうした購買予備軍を含めた需要は年間にどのくらい発生しているのでしょうか?
シングル需要、DINKS需要、シニア需要、セカンドハウス需要、一戸建てからの買い替え需要などなど。

この答えとなる適切なデータは見当たりません。しかし、市場実感として言えるのは、50,000以上はあるということです。

2000年からリーマンショック前年の2007年までの年間供給戸数は、80,000戸を超えることとなりましたが、この頃は特別でした。バブル期の供給不足がウエイティング需要を蓄積させていたからです。そして、爆発的な売れ行きをもたらしたのです。

ところが、2006から2008年にかけて価格が急騰して販売率が悪化。そこへリーマンショックと言われた金融危機が勃発。これが契機となって世界同時不況が発生。この影響で売れ行きが一段と悪化し、その後の価格下落につながって行きました。

価格の下落が止まったのは、2012年でした。販売状況も上向きかけていました。しかし、供給戸数は伸びませんでした。原因は先に見た「用地不足」などにあったのです。 

用地不足は、企業のリストラ(土地の置き換え・単純放出)が一巡してしまったからです。特に大規模敷地は湾岸エリアに限られてしまったかのようです。

超長期で見れば、人口の減少が住宅需要の減少をもたらすことは間違いないですが、首都圏、とりわけ東京都区部は減少スピードが遅いと考えられています。最近も全国の傾向と逆の増加傾向にあります。

こうした背景を見ながら考察して行くと、向こう10年程度で需要が2割も3割も減ってしまうことはないでしょう。しばらくは50,000戸程度の需要はあると見てよいのです。まあ、減っても40,000戸くらいは維持できるはずです。

そんなマクロ市場とは別に、都区部・都心などという特定エリアになると需要は底堅く、むしろ増えると見てもよいかもしれません。

●今後はどうなる=供給戸数は低迷する

前回の価格高騰期(2005年~2010年)の初期は、買い急ぐ人が増えて爆発的な売れ行きとなりましたが、その後は需要がついていけなくなって売れ行きが悪化しました。売れ行きが悪化して、値引き販売が横行したのが、2007年後半からリーマンショック後の2009年でした。

しかし、統計上の価格は値引き実態が反映されないため、2009年、2010年と高い状態にありました。統計上、明確に下げが表れたのは、2011年に入ってからでした。2012年もその流れが続きました。この2年間が底這いの時期だったとするなら、僅か2年でそれが終わり、2013年からは再び値上がり局面となって2016年まで続いて来たというわけです。

2016年は販売率が低迷し、それが売り出しを停滞させたわけですが、2017年以降はどのように推移するでしょうか?

既に見たように、用地の取得難は解消されていないので、今後も最近9年と大差ない状況が続くことでしょう。売れ行きが大きく好転すれば増える可能性はあるでしょうが、売れ行きが良くなる材料もないので、2017年も2016年から大幅に増えるとは考えにくいのです。

つまり、今年も買い手にとって、品不足の中での苦しい選択を強いられる可能性が高いと見た方がよいでしょう。

●今後はどうなる=価格も大きく下落することはない?

新築マンションの価格は、「用地費+建築費+利益」という構造になっています。この3要素について、それぞれの見通しを述べましょう。

➀建築費は頭打ちだが下がる傾向にもない

建築費に関しては悲観的な見方が支配的です。つまり、まだ東日本震災の復興需要は残っていますし、国土強靭化政策によるインフラへの公共投資が急増しているうえ、今年(2017年)は東京オリンピック関連需要が本格化して来るからです。

オリンピックは、国立競技場の建て替えや各種競技の会場建設、老朽化した高速道路の改修をはじめとする道路工事、民間ではホテル建設などが、合わせて兆円単位で発生すると言われます。

渋谷駅や品川駅、新田町駅周辺の再開発、虎ノ門・神谷町から六本木・麻布台にかけて行われる再開発、日本橋界隈の再開発など、都心の再開発は目白押しで、これらはオリンピック後も続くと見られますが、3年後には東日本の復興関連もピークを過ぎているはずで、建設業界には一服感が出ていると予想されます。従って、3年先には建築費も低下傾向に転じているかもしれません。

②用地費が安くなるとも思えない

マンション用地は、ある程度まとまった大きさが必要であり、かつ交通便が良いことや環境が良いことなど、マンション建設にふさわしい条件を具備している必要があります。ところが、そのような土地はそうそう沢山あるわけではありません。

工場や倉庫、社宅、ガソリンスタンド、運動場などが企業のリストラの一環や移転、廃業といった事情で売り出されると、マンションメーカーはこぞって入札に参加します。そして、一番札を入れた企業に高値で売却されます。

最近の報道によれば「敵はホテル」とあります。また、流通倉庫が足らないそうです。そういえば、マンションデベロッパーでもある大和ハウス工業が有明エリアで大型の売地を最低入札価格の2倍の高値で落札したというニュースを聞いたときは、まさかと思ったのですが、後日その土地はマンション用地として取得したものでなく、物流基地用に取得したと伝わって来ました。

マンション市況が良いときは、マンションメーカー各社は土地取得に積極的になります。高い札を入れてでも優良な土地は何とかして確保しようと前向きになるのです。その結果、新聞発表の上昇率3%などとは大きく隔たりのある高値取引が成立してしまっています。

マンション市況が悪化してきたため、今後は少し様子が変わってくるかもしれません。しかし、まんしょん業者以外の競争相手も多いので、用地費が下がる見通しは持てません。

➂利益を圧縮する

以上から、用地費が下落しそうになく、目先の建築費も下がらないとするなら、最後の手段は利益の圧縮しかないことになります。しかし、元々分譲マンションの利益率は多くないので圧縮するにも限度があるのです。

前回の低迷期にも価格が直ぐに下がらなかった(売れ行き悪化のピークは2007~2009年だったが、価格が下がったのは2010~2011年とずれ込んだ)根本要因は、ここにあるのです。

マンション開発は2年前後の時間を要するので、高く仕入れてしまった土地上に、下がりそうにない建築費をもって今後建てられるマンションは、どう見ても昨年から大きく値下がりするとは思えません。


●今後はどうなる=粗悪品が増える?=郊外に向かう?

最後の手段は、商品戦略の見直しでしょうか。 既に傾向は見られるのですが、面積の圧縮によってグロスの価格を安くするという作戦が挙げられます。

次に採る作戦は、商品グレードを下げるというものです。詳しくはここで述べませんが、見えない部分で設計の簡素化を図り、また、工事の省力化につながる設計を行うことによって実質的な商品価値の低下を図る動きです。これが一段と進む可能性がありそうです。

過去3年か4年の経過から受ける印象は、既に行きつくところまで到達しているとも思えるのですが、もっと策があるのかどうか、確信は持てません。

また、地域的な変化も見られるかもしれません。つまり、最近は敬遠されて来た都心から離れた地域や、バス便立地などの供給も増えてくるかもしれません。こちらも断定はしにくい点ですが、考えられる策です。

いずれにせよ、注視して行くほかありません。

●新築価格に接近するする中古

新築マンション市場が以上に述べた状態で推移するなら、中古マンションの人気は当分続くことが考えられます。中古も価格高騰は顕著ですが、数だけなら市場に溢れています。

ただし、物件固有の条件、価値に大きな格差があるという事実に着目しなければなりません。安いというだけで飛びつくのは考えものです。

反対に、「中古なのに、何故こんなに高いのか」、そうぼやく声もときどき聞こえて来ます。そして、リフォーム代を加えたら新築と変わらない中古という実態もあります。

同じ値段なら新築がいいよと言ってみたところで、新築がないのなら中古も視野に入れなければマイホームは買えない。それもまた現実なのです。


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「買ってよかった」を再確認したい方もどうぞ。物件サイトが閉鎖されている場合は、建築概要・住戸専有面積・階・向き・価格・管理費・修繕積立金などの情報をご提供いただくことが必要になります。
※中古物件の場合は、物件の掲載WEBサイトのURLをご記入ください。
※その他のご注意事項はHPでご確認をお願いいたします。無料には条件があります。ご注意ください。尚、価格情報のないご依頼はお引き受け致しかねます。













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築50年マンションを買った男の話 [マンション投資]

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。


知人のXさんは、最近ぼろぼろのマンションを格安で譲り受けたそうです。

マンション名は明かせませんが、新宿区内にある築50年の古いマンションで、戸数は30戸足らずです。専有面積は45㎡。レトロ感がいいと笑いながらXさんは語るのですが、管理は事実上放棄されているのだそうです。管理会社はとうの昔に契約を切り、今は清掃だけ専門会社に委託し、自主管理形態にしているようです。

所有者で居住している人は5人しかなく、賃貸している部屋が6割。残りは空室となっています。Xさんも、貸すかどうか迷っていると言います。

貸すには、多少でも室内に手を入れないと借りてもらえそうもないのだだそうで、その費用が惜しいわけではないが、一度入れてしまうと出て行ってくれないのではないかと心配して相談して来たのです。

よくよく聞いてみると、そのマンションは周囲の木造家屋・店舗とともに解体し、ひとつのマンションに建て替えたら儲けられるのではないかと考えて購入したのでした。

近所の不動産業者の話では、近く取り壊される家屋もあるとのことで、デベロッパーのA社が動いているのだとか。

「いずれは、マンションの所有者にも売って欲しいという話が舞い込むかもしれません」と不動産屋は耳打ちしたと言うのです。

Xさんは、高値転売を期待しているのですが、貸してしまうと、借家人に立ち退き料を多額に払う破目になる。そうなれば折角の儲けもなくなることを心配しているわけです。

そう、Xさんは素人なのです。このような案件に素人が手を出すのはいかがなものか、話を聞いて筆者はそう思いました。
マンションの所有者が不動産会社からの買収案に一斉に手を上げるでしょうか?買主は、所有者個々に「〇〇〇円で売って欲しい」と持ち掛け、安く手放す人から順に購入して行くことになるでしょうが、必要な数を取得するまで何年もかかることでしょう。

80%まで買収が進めば、反対者があっても建て替え決議はできるので、計画は一気に前に進むはずです。

Xさんは、不動産会社からの提案金額が高かったら売るが、安ければ売らない。積み増しがあるまで粘るつもりのようで、10年くらいの長期計画だというのです。

筆者は、容積率を調べてみたかと聞きました。すると、現マンションの実効容積率は160%、都市計画図の容積率は200%だから、将来の建て替えで40%分の余剰床が生まれると思うとXさんは、少し胸を張って言いました。

その程度の余剰床では、不動産業者の妙味はあまりないと思うよ。筆者はそう答えました。「それに、ここは200%の指定かもしれないが、道路幅が狭い関係で200%までは建てられない可能性が高い。周囲の建物の道路付けがどうなっているか見まないと分からないが、最悪は160%だね」と続けたら、Xさんはショックを受けたようでした。

さほど大きな土地ではないが、建物がない状態で買収できるならマンションメーカーにとってもメリットはあるでしょう。建物の解体費を計算しなければならないなら、かなり安く買わないと採算には乗らないでしょうね。そうも付け加えておきました。

「鍵は、マンション周辺の家や店舗がどのくらいの金額で建て替え(再開発)話に乗るのかと容積率がどのくらい伸ばせるかにありそうだねと、話はこれで終わりました。


先ごろ、都内の古い旧公団の分譲マンションを買いたいという単身女性から物件の評価を依頼されました。5階建ての5階でエレベーターがないタイプのマンションです。2DK。昔のファミリータイプです。

素晴らしい環境で住み慣れた地元の物件でもあるので、価格も安いし、買いたいというのですが、旧耐震基準の建物であるし、慎重な意見をつけてレポートをしましたが、その後、面談する機会があって計画を聞いたところ、20年くらい先に、建て替えになるかもしれないことに期待しているという本音を聞かせてくれました。

最近、このような築40年~50年の古いマンションを敢えて狙っていると思えるようなご相談事例が相次ぎました。といっても、上記の2件以外にはっきり断定できるのは1件あるだけなのですが、築40年超えの物件を検討している人からの相談件数はうなぎ上りです。

Xさんは別としても、うまく行けば、思いがけない利益を生み出す宝となりそうな話にすっかり感心させられてしまいました。

素人さんの発想ではあっても、ポイントを抑えておけば、時間はかかるものの、ワンルームマンションを定年後のために買うより、面白いかもしれない。賃貸が可能な物であれば大丈夫そうだ。しかし、こんなリスクはありそうだ。最悪はこうなるだろうが、その可能性は低い。うまく行けばこうなる・・・・などと筆者なりにケーススタディしてみたりもしました。

ぼろぼろのマンションを格安に買って賃貸し、マンションメーカー(デベロッパー)の買収提案に乗って売却益を得るか、もしくは等価交換の提案に乗って新築マンションを手に入れて住む、または、それを売却して利を得るといった長期不動産投資サラリーマン投資家の間で、密かなブームになるかもしれないなあ、そんなことを想像しました。

下手なワンルームマンションに投資するよりリスクは低く、長期の投資として妙味があるかもしれない。安い家賃で社宅住まいを続けられる人や、マイホーム以外にローンを組める所得のある人、独身者などに向くかもしれません。

新たな研究テーマができた思いです。


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感動を覚えるマンション・部屋かどうかがカギだ!! [マンション購入アドバイス]

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。



「マンションを選ぶって難しいですね」こんな感想を頂くことがあります。何が重要なのか、何を優先して選べばいいのか、勉強して行くうちに訳が分からなくなる人も多いようです。

今日は、選ぶときのキーワードのひとつ「感動」についてお話ししましょう。


●新築マンションのモデルルームに感動する

新築マンションの場合では、家具やカーテン、照明器具などでコーディネートされたモデルルームを見学した買い手が、広々としたリビングルームや豪華で美しいキッチン設備、お洒落な洗面化粧台などにうっとりして酔ってしまう人が少なくありません。

プロの販売チームは、買い手をいかにその気にさせるかに知恵を絞ります。モデルルームの飾りつけ・演出もそのひとつです。

購入者は、モデルルームを見てチープな感じでしたとか、期待を裏切るものでしたなどと感想を述べる、見慣れた人、研究が進んだ人ばかりではありません。

売主は、予算が合わないからと諦めてしまう人もあるのは仕方ないとして、予算が合致する人には、できるだけ高確率で感動を覚えてもらい、「舞い上がっていただきましょう」とモデルルームと、その手前で見せる映像(シアタールーム)などの演出に知恵を絞っています。

この話は、売主が仕掛けた罠にはまらないようにという「警句」として述べたわけではありません。まして、より感動の度合いが大きかったマンションを選ぶべきということでもありません。

●想像外の感動的な眺望に声を上げる

中古マンションのWEBサイトを見た経験がある読者は、バルコニーからの眺望、寝室からの眺望などとして景観(眺望)写真が載っていることにお気付きだと思います。

新築マンションのHPでも「〇階相当から見た景観」と断りながら、東西南北のビューをアピールしたものが多数見られます。

景観(眺望)はマンションの価値を左右する重要な要素になっていることをマンション業者はよく知っているのでしょう。目の前が壁になっているようなもの以外は、必ず眺望写真を掲載します。

インターネットの写真では見る人に感動を与えるまでには至りませんが、実際に部屋を内見したとき、閉じていたカーテンを開けた瞬間に広がる窓外の景色を見て感嘆の声を上げることがあります。

15階、あるいは20階? 物件・場所によって異なるはずですが、10階以下でも素晴らしい景観に感動したマンションを、同伴した筆者自身もたくさん見て来ました。

●エントランスホールの広さと天井高に驚く

完成した新築マンションの内覧会で、大規模マンションのエントランス内外の豪華さに驚かされることがあります。予めパンフレットや大型パネルの完成予想図を見ている買い手でも、実物を見て感動している様子をそばで何度も拝見しました。エスカレーターで1階上っとところにラウンジがあるようなマンションなどは、その最たるものです。

中古マンションの内見者になると、予想していない光景に遭遇して思わず「わ~すごい」と声を上げてしまう人もあるようです。

大抵このようなマンションは、エレベーターもグレードが高いものであるし、内廊下方式になっていて、静寂であるとともに、床が絨毯張りで室内と同じエアコン付きなので、きっと「ホテルみたい」と言って感動するに違いありません。

●そこだけが別世界の趣がある街であることに「住みたい」と感じる

マンションの大規模再開発で誕生した街に赴くと、駅前の光景とは全く別世界が広がっていると感動することがあります。住み慣れた沿線であれば駅の周囲の景色は電車内から見知っているのでしょうが、地下鉄しかない街は駅を降りたことがなければ、まるで街の景色を想像できない街もあるはずです。

全く知らない街、馴染みのない街の物件に興味を覚えることは少ないはずですが、それでも住んだことのない街には想像外の景観の発見があるものです。

そんな街は、首都圏にいくつかあります。卑近な例で言えば、中央区の月島から5分ほど歩いたリバーシティ21と名付けられた一帯が浮かびます。

超高層マンションが立ち並ぶ街ですが、30年くらい前に始まった造船所跡地にできた別天地が広がっています。
駅前の喧騒やもんじゃ焼き店に代表される下町の雰囲気とは全く別の、そこだけが別世界です。美しい街並みと、隅田川ビューが初めて訪れる人を感動させます。

当然のごとく、築25年を超える中古マンションの資産価値は今も高く維持され、取引価格も周辺のマンションとは別格の高さになっています。

●感動は長く続かない

昔、ある設計士が「掃き溜めに鶴」の発想ですと発言してびっくりしたことがありました。街並みに溶け込むようにデザインをしましたという類の考え方を聞くことが多いからで、正反対の発想に戸惑ったということだったかもしれません。

横浜市の工業地帯の土地を買った某デベロッパーが、有名な設計家に設計を依頼したのですが、最初のプレゼンテーションで冗談交じりに語った言葉でした。この場所では、反対の発想が必要だなと妙に納得した自分がありました。

素晴らしいプランニングでした。外観デザイン、外構計画などが美しく、間取りも広くユニークなものでした。今も、行ってみると古ぼけた感じはあるものの、周囲には全く見られない素晴らしいマンションです。購入した人は、きっと感動したことでしょう。

しかし、分譲当時の販売成果は散々なものでした。最後の方は15%くらい値引きを強いられたと記憶しています。

そのマンションは、残念なことにバスを利用しなければならない場所に建っています。それがネックでした。また、周辺は工場がまだ残っていて環境・景観が折角のマンションの価値を大幅に引き下げてしまったのです。

感動し、夢見心地で家路につくことはできなかった、そんな人が多かったのでしょう。売主にとっては、プランニングだけでは交通便の悪さを克服するのは難しいという教訓になったプロジェクトでした。

ともあれ、感動も一瞬にして消える感動と、長く余韻として残る感動があるのでしょう。強烈に記憶される感動ということでしょうか。

言うまでもなく、何度見ても素晴らしいと感動できるものがいいはずです。


●「感動するのはどちら?」と自問してみる

新築にしろ、中古にしろ、選ぶときの決め手は「感動の有無」にあります。将来の売却が想定されるならば、次の買い手さんが感動してくれるかどうかという視点が大事ですが、今まさに買おうかどうかと迷っているあなたも、初めて見たときに「感動したかどうか」を思い出してみることが必須です。

縦列の同じ間取りの5階と8階で、どちらにするか悩んでいます。日当たりはどちらも悪くありません。そんなときは、価格差と予算の問題もあるでしょうが、原則は見晴らしの良い方、すなわち遠くまで見通せるほうがよいはずです。

南向きの5階と西向きの10階、価格も面積も同じという場合も同様です。

窓がワイドな横長リビングの東向き住戸と南向きだがスパンが狭く窓幅も狭い住戸、このような住戸の比較で悩んだら、この部屋に来た他人が感動するのはどちらだろうかと考えてみることをお勧します。

?間取りは気に入ったが、エントランスが狭く貧弱な感じ、外観も取り柄はない。ただ、価格は安い、②間取りは普通だが、駅前の目立つマンションでエントランスも立派、?間取りも普通で建物の外観デザインもスケール感もそこそこだが、裏通りなので静かで目の前が小公園、それでいて駅に3分と近い、その代わり価格は一番高い。

こうした比較をすると、「あちら立てればこちらが立たぬ」と悩み、結局は売れてしまったり、売れずに残ったままなので「やっぱり、何かがある」と勘繰ってしまったりと、マンション選びは容易でないとこぼす人も多いのが現実です。

マンション選びは様々な要素を絡み合わせて決めることが多いものです。簡単で絶対的な選び方はないだけに、「感動」は迷ったときの答えを導いてくれるキーワードになることがあります。頭の片隅に置いておかれるとよろしいでしょう。


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新ブログ「間取り名作選」を始めましたが・・・ [マンション設計]

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。


この記事はマンションデベロッパーの企画担当者並びに図面を引く設計士さんに届と願いつつ書き下ろしたものでもあります。

実務経験を持つ筆者は、したくてもできない制約の存在をよく知っています。法的制約は当然ですが、大きな壁はコストであることも。しかし、顧客ニーズを無視してよいわけはありません。

最近(2010~2015年)の間取りは、明らかに退歩してしまったように感じます。一部のデベロッパーに、コストの壁を越えて少しでも住みやすい快適なプランを提供しようという動きがあることは認めますが、ドラスティックなプラン、少なくとも昔から評判の高かった、今も変わらない優良な間取りプランは影を潜めているのが現実です。

マンションを購入する立場から見ると、立地条件が優先しますし、間取り選びは後順位になってしまう人が多いのであり、最後は妥協を強いられる要素になってしまうようです。買ってくれたとしても、決して満足して選択した間取りでないことに着目しなければなりません。

もちろん、作り手も「つまらん間取り」と自覚しているのかもしれませんが、実にありきたりの間取りばかりです。

筆者が別で運営しているブログ「三井健太の名作間取り選」を見て頂くと分かるはずですが、古いマンションの中に優良な間取りが多く見られます。

ときの移り変わりは、人の好みもライフスタイルも変わって行くことを示します。しかし、不易流行という言葉があるように、今も変わらないものがたくさん残っているはずで、マンションの間取りにおいても普遍的な要素は少なくないはずです。

どうして時計の針が逆回りしたかのような「つまらん間取り」ばかりが出て来るのか、理解に苦しむ物件を見かけるたびに残念な思いにかられます。

例えば、アルコーブを止めてしまった間取りを見ると、コストダウンのためだろうとしか推測できませんし、これだけでコストが一体いくら上がるのか、多額ではないはずだ、それでもそうしてしまうのは、きっと他もコストカットしているのだろうと疑わざるを得ないのです。

ゼネコンとのネゴシエーションに臨んだ経験から言えるのは、予算内にコストを抑える最後の策は設計変更になるのです。設備・仕様のランクをA級からB級に落すことや、採用そのものを止めてしまうことです。

その結果、遮音性能や断熱性の低い建物となり、ドアハンドルなどの金物のデザイン性が低くなったり、床暖房のない部屋になったりします。

ドアハンドルをA級からB級品にしたところで、1住戸にしたら僅か10,000円違いであっても、そうした設計変更を数多く実行すると全体では巨額となり、営業サイドから要望される販売価格に近付けます。

一方、アルコーブがない間取りや直貼り床などというのは、設計の初期段階から予算オーバーを見越してプランニングしたものである公算が高いのです。

敷地条件から羊羹切りになってしまうのは、ある程度しかたない部分であることも、理解はできます。昔から存在した課題だからです。

しかし、それでも課題を克服して優れた間取りプランを生み出すべく先人は努力をしたのです。あの精神はどこへ行ってしまったのでしょうか?

先に紹介させてもらった筆者のブログをご覧いただいた方から、いくつか感想を頂きました。「昔はこんなに素敵な間取りがあったのですねえ」――これが共通です。


アルコーブの取り方にもこだわろう――彫りの深い顔か平板な顔か。どんな表情の家にするかを考えてデザインしよう。

玄関灯のデザインもおろそかにしないで

角住戸は門扉付きのポーチを取りたいものです。

子育て世帯にベビーカーの収納を考えてあげよう・ゴルフをしような世代が対象ならバッグを仕舞うスペースを考えよう・女系家族は靴が多い――だから「シューズインクローゼットが必要になるのです

玄関の幅は廊下と同じ1000ミリ+下足入れの幅分、合計1400ミリでは魅力はない

玄関ホールと廊下の幅が同じ「寸胴型」はできるだけ避けたい。ホールは可能な限りワイドに

玄関からストレートにリビングに向かう廊下は、奥が丸見えになってしまうので、可能なら「クランクイン」にしたい。

玄関脇の寝室のひとつが主寝室という場合、廊下から可能な限り遠ざける配置としたい。プライバシー確保のためである。

WIC(ウオークインクローゼット)より幅広のI型クローゼットの方が良い場合もある。

布団収納を忘れてはいけない。

ダブルベッドは必ず両側を40cm以上空けて置くのが基本と考えて主寝室サイズを決めよう。

リビングダイニングも寝室も、それぞれ家具配置をしてみて不都合があれば、レイアウトは見直そう。

大梁やダクトスペースなどによる天井面も軽視しない――折り上げ式にするのもいいが、何より大事なことは狭い個室に垂れ下がった天井によって圧迫感のある部屋を創らないことである


――筆者はこんなふうに訴えたいのです。


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